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寄稿 河北新報コラム(微風旋風)Vol.4「Yu-Walk」

 約束のものが再度求められた。当法人「nasu地人協会」が推進する「秋田空港周辺エリア振興事業」のイメージソングが紛れもなく制作されようとしている。楽曲の寄贈を申し出た彼の本気を悟り、同事業の関係各所へ協力を依頼した。楽想の素材として提出するはずだったキーワードやエピソードを急ぎ揃えねばならない。関係者の心の声を引き出し、ボイスレコーダーに吹き込んだ。全盲のシンガーソングライターであり、遠く都内を拠点とする板橋かずゆきさんへ届けと願い、一度接したきりのその姿を卓上の機器の向こうに思い浮かべた。雄和(秋田市)を訪れた出会いの日の言葉を彼は実行しようとしている。


 歌詞は「空港道路」と呼び親しまれる県道9号及び46号の利用者(君)と関係者(僕)の友情が構成の軸となった。同道は秋田空港の開港から長きにわたり、空の玄関口へつながるアプローチとして幾多の物語を運んでいる。利用者を出迎え、見送ってきた関係者の誇りと悦びが全編に投影された。ひとびとを誘う“華”の“丘”は秋田国際ダリア園のまさに当期の景観だ。同園を経営する鷲澤一家に見立てた鳥影と行き交う旅客機を象徴する“翼”や“羽根”の比喩もちりばめられた。タイトルの『Yu-Walk(ユー・ウォーク)』は地名と英動詞を掛け合わせ、雄和周遊を促す合い言葉とした造語がそのまま採用されている。


 同曲の発表は昨年の10月21日だった。県紙が「歌で応援」の見出しに歌詞を併記で取り上げた反響により、詩中の“此処”が指す華の里エリアは期待を抱く来場者で満ちた。ステージを見上げる顔が歌声を浴びて一様にほころびた。壇上の人が二度目の来訪にしてもたらした幸福のひと時であった。


 外部連携の効果を実感した経験から、今年は新規事業の「雄和周遊会議」(10月19日13時/入場無料)を同エリアで立ち上げる。都度選定するテーマにちなんだ人物が思い思いの方法で雄和の魅力を発信する企画だ。初回のテーマは関係者がCD化へ踏み切った『Yu-Walk』以外にありえない。同日のリリースは彼に贈られた夢を描き続ける意志の表明だ。明後日、板橋かずゆきさんが三度雄和を訪れる。

◇鎌田展禎(かまだ・ひろさだ)
NPO法人理事長。2009年任意団体「茄子(なす)地人協会」設立。2010年日本青年団協議会主催「全国地域青年実践大賞」受賞。2019年NPO法人「nasu地人協会」設立。有限会社「芝野農興」組合員。2016年同社空中防除部門「スカイ・サポート秋田」設立。秋田県出身。

(河北新報朝刊│コラム微風旋風│2019年10月17日掲載)

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