雄和よりみちフェス♪

「雄和よりみちフェス♪2025」閉幕

今秋もおかげをもちまして秋季イベント「雄和よりみちフェス♪」を無事のうちに閉幕することが出来ました。
近年は雄和地区の一大行事として秋田市内外へ周知されたかに見受けられ、本事業承継の2012年から当法人を支え続けてくださる関係各所へは心から感謝を捧げております。

過去の開催における忘れ難い思い出は少なくありませんが、それらの記憶と比してもとりわけ印象深いものとなった一場面を読者各位と分かち合いたい一心からその一部始終を今回の記録として本稿に留め置きたいと存じます。


〈2025年10月12日〉

イベント二日目(最終日)に予定された午前の部の竿燈演技は、出演の竿燈会三団体(川反五丁目竿燈会・駅東竿燈会・立正佼成会竿燈会)と当法人との協議により、「見送り」せざるをえないと判断され、同日は午後の部の妙技披露に全力を注ぐ方針が採られました。
数日前からにわかに悪化した天気予報のとおり、降りしきる雨がはやくから会場を見舞ったためです。

それでも、十年にわたってイベントに華を添えてきた厚志の竿燈衆は、今年最後として上がる竿を「目に焼きつけよう」と来場された観客へ向け、簡易テントを設置し、タープにくるんだ太鼓を押し入れ、“お詫び”の竿燈囃子を奏でる心遣いを示したのち、午後の部への期待を乞い訴えたのです。

それさえ、運営スタッフにとっては目頭を熱くさせられる振る舞いなのでしたが、その一念も天に届かず、「今日一度きり」と賭して待ち構える出番を一時間後に控えた正午は無情の水しぶきが激しさを増すばかりでした。

もはや、主催者が苦渋の決断を下すべき事態に「迫られた」とおもい定め、当法人の役員二名が、竿燈会の控え所として呈された古民家「里の家」へ赴き、(屋内の意外にもおおらかな雰囲気に違和感を抱きながらも、)出演の取り止めを切り出すと、奥の座敷から式台まで、馴染みの笑顔を運んできた親方衆のひとりが発するには、きっぱりと「上げましょう」の一言なのでした。

そう決めつけた盛林正彦代表(川反五丁目竿燈会)に促されるまま、土間の一隅をみやると、竿から一旦はずされ、ひとつひとつを撥水素材で覆われた提灯がきれいに積み重なっており、「華の里」の空に舞う仕度はすでに終えようとしたところだったのです。

当法人の開催十余年の歴史のなかでも、“語り草”として分類されるであろう雨中の竿燈演技は、かくして決行されることとなりました。

防水処置がほどこされた竿は、会場へ運搬された三本のうちの一本のみです。
その一本の“大若”を、心意気をたぎらせた総勢二十数名の差し手が、奪い合うように、代わる代わるに掲げ上げ、技巧を競ってみせるので、寒空のもとに身を寄せ合った観客もその高揚の飛び火をもらい、手拍子・掛け声を送らずにはいられません。
差し手とおよそ同数の囃子方も笛・太鼓に一層力をみなぎらせます。

今の今まで、見せ場を引き伸ばしにされた腕に覚えの差し手の面面は、午前から会場に留まり、待ち侘び抜いたらしい顔また顔を其処此処にみつけると、憂さ晴らしもなお足りぬとばかり、イベントを象徴するアイテムとなった虹色傘や巨大な造花を手に持ち替える即興の演出を繰り出しはじめ、どこまでも粋を尽くして人人の心を悦ばせるのです。

最悪の状況を最高潮の舞台へ転換してしまった竿燈衆の姿を、運営スタッフは感動のなみだ越しにながめながら、1996年から継続される本イベントが、断絶の危機に瀕するごとに蘇生してきた訳を今さらにしておもい知るとともに、閉幕間際の素晴らしいひとときをうっとりとして過ごしたのでした。


今回の開催にともなう事実的な進歩としては、当法人の企画顧問・工藤知彦秋田市議会議員の口添えによる臨時駐車場(高尾自動車整備工場)の拡大があり、協賛企業・伊藤工業の仲介による運営スタッフの増員あり、また、会場に隣接する団地住民によって構成される糠塚自治会との協力関係も結ばれ、今後の事業展開に資する環境的な基盤が整い、“まちぐるみ”の活動とみなして差し支えない段階までいよいよ辿り着いたものと自負しております。

わが県の空の玄関口「秋田空港」の門前に「かつての活況を取り戻そう」とおもいを寄せて集った有志のつむぐ物語を将来までも見届けてくださいますよう本稿の読者各位へ切に望むとともに本年もご来場いただきました皆様へあらためて感謝を申し上げます。


(理事長・鎌田展禎)

-雄和よりみちフェス♪